匂いの神様 その38

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「な、なンスか。」
「いいから、ほら!」

そう言うと、女将さんは栗田君の肩に手を乗せた。女将さんが背伸びをしただけでは、栗田君の耳には届かないのだ。しょうがなく、栗田君は中腰になる。

「栗田君、香水してる?」

すっと、背骨が冷える感触に襲われる。まさか、こんなに早く効き目がでてしまうとは。女将さんにも効果でるかもしれないとは、栗田君も勿論思っていた。問題は、親方が近くに居るということだ。問題と言っても、親方がいるから我慢されるのでは・・・ということではない。万が一、親方がいる前で妙な行動をされたら、店はえらい騒ぎになってしまう。栗田君は、それを恐れていた。

「い、いえ。してないですよ。まさか。」

当たり前のことだが、店の中で香水や匂いの強い整髪料は禁止されている。女将さんが怪訝そうな顔をしているのは、そのためだろう。

「そうお?私、鼻はいいのよ。」

勝手に栗田君の袖をつまんで、クンクンと栗田君の匂いを嗅いでいる。栗田君は、文字通り息を止めて、その仕草を眺めていた。

「やっぱり、なんか、いい匂いするよ。」
「・・・気のせいじゃ、ないですか。」

罪悪感を感じながらも、とぼけるしかなかった。事情を説明するなんて、不可能なのだ。

「あ、そうだ。ほら、先輩、僕、何か匂いしますか。」

たまたま通りかかった先輩を捕まえて、半ば無理やり袖を押し付ける。栗田君の匂いは、男には感じ取れないはずなのだ。

「な、なんだよ。別に、何も匂わないけど・・・。」

迷惑そうに、率直な感想を述べる先輩は、救世主のように後光がさして見えた。

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2007年08月10日 匂いの神様 トラックバック(1) コメント(0)












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